電気工事士のための熱中症対策:現場のプロを守る命綱

電気工事士のための熱中症対策:現場のプロを守る命綱

2025/06/25

投稿者:elecareer_staff

はじめに

 

夏の炎天下での作業、あるいは閉め切られた空間での作業が多い電気工事士の皆さんにとって、熱中症対策は日々の業務において最も重要な安全管理の一つです。ニュースで熱中症による悲しい事故が報じられるたびに、現場のプロとして、自らの命と健康を守ることの重要性を再認識されていることと思います。

 

電気工事の現場は、屋内外問わず、高温多湿になりやすい環境が多く存在します。そんな過酷な環境下で集中力を保ち、安全に作業を遂行するためには、徹底した熱中症対策が不可欠です。

 

このコラムでは、電気工事士の皆さんが現場で実践できる具体的な熱中症対策から、会社として取り組むべき対策、そして万が一の際の対処法まで、読み手の皆さんの命を守るための情報を充実した解説とともにお届けします。

 

 

 

電気工事士が熱中症になりやすい理由と危険性

電気工事士の仕事は、その特性上、熱中症のリスクが高い環境に身を置くことが少なくありません。まずは、その理由と熱中症の危険性について理解を深めましょう。

 

1. 屋内外問わず過酷な作業環境

 

電気工事士の作業現場は多岐にわたり、それぞれが熱中症のリスクをはらんでいます。

 

  • 屋外作業: 真夏の太陽が照りつける屋根上での配線作業、電柱上での高所作業、地下埋設管の敷設など、直射日光を浴び続ける環境では、体温が急速に上昇します。アスファルトやコンクリートからの照り返しも強く、実際の気温以上に暑さを感じやすいです。

 

  • 屋内作業: 密閉された電気室、分電盤内での作業、空調が効いていない新築現場、あるいは改修工事で電源が一時的に停止している建物内など、風通しが悪く熱がこもりやすい場所での作業も多いです。換気が不十分な場所では、作業員の呼気や発熱機器からの熱がこもり、体温上昇を招きます。

 

  • 高所作業: 電柱や高所作業車の上など、高所での作業は、通常よりも風の影響を受けやすいため、体感温度が下がると錯覚しがちですが、実際には直射日光や輻射熱の影響を強く受け、熱中症のリスクは高まります。また、高所での体調不良は、転落などの重大な事故に直結する危険性があります。

 

2. 集中力を要する精密作業

 

電気工事は、配線ミスが火災や感電事故に繋がるなど、わずかなミスも許されない精密な作業が求められます。

 

  • 集中による発汗抑制: 細かな作業に集中することで、知らず知らずのうちに発汗量が低下し、体温調節機能がうまく働かなくなることがあります。

 

  • 休憩の取りにくさ: 作業に没頭するあまり、意識的に休憩を取るタイミングを逃してしまうケースも少なくありません。特に、作業を中断すると危険が生じるような場面では、無理をして作業を続行してしまう傾向があります。

 

3. 感電のリスクを伴う服装

 

感電防止のため、電気工事士は長袖・長ズボンの作業着を着用することが一般的です。

 

  • 通気性の悪さ: 肌の露出が少ない服装は、直射日光から肌を守る効果はありますが、同時に通気性が悪く、体内に熱がこもりやすくなります。特に、厚手の作業着や難燃性の素材は、さらに熱がこもりやすい特性があります。

 

  • 個人用保護具: ヘルメット、安全靴、保護手袋なども、安全のためには不可欠ですが、これらも体温上昇の一因となることがあります。

 

 

 

現場で実践!電気工事士のための具体的な熱中症対策

日々の現場で実践できる、具体的な熱中症対策をご紹介します。

 

1. 体調管理と水分・塩分補給の徹底

 

熱中症対策の基本は、日頃からの体調管理と適切な水分・塩分補給です。

 

  • 前日の体調管理: 前日は十分な睡眠をとり、深酒を避けるなど、体調を整えておくことが重要です。体調が悪いと感じたら、無理をせず上司に相談しましょう。

 

  • こまめな水分補給: のどが渇く前に、意識的に水分を補給しましょう。スポーツドリンクや経口補水液など、塩分や糖分が含まれたものが効果的です。水筒やペットボトルを作業場所に持ち込み、手の届くところに置いておく習慣をつけましょう。

 

  • 塩分補給: 汗をかくと水分だけでなく塩分も失われます。塩飴やタブレット、梅干しなどで適度に塩分を補給しましょう。

 

  • カフェイン・アルコール飲料の制限: 利尿作用のあるカフェイン飲料やアルコール飲料は、水分補給には適しません。

 

2. 服装と冷却グッズの活用

 

安全性を確保しつつ、体を冷やす工夫を取り入れましょう。

 

  • 通気性の良い作業着: 法令や会社の規定範囲内で、通気性や吸汗速乾性に優れた素材の作業着を選びましょう。最近では、ファン付き作業服(空調服)の導入も進んでおり、体温上昇を効果的に抑制できます。

 

  • 冷却グッズの活用: 首元を冷やすネッククーラー、冷却ベスト、ヘルメット内に装着する冷却シート、体を拭く冷感タオルなど、様々な冷却グッズを活用しましょう。凍らせたペットボトルをタオルで包んで首や脇に当てるのも効果的です。

 

  • 帽子の着用: 屋外作業では、直射日光から頭部を守るために、ヘルメットの下に吸汗速乾素材のインナーキャップや日よけ付きの帽子を着用しましょう。

 

3. 休憩の取り方と作業計画の見直し

 

効果的な休憩と、熱中症リスクを考慮した作業計画が重要です。

 

  • 定期的な休憩: 30分に1回、あるいは1時間に1回など、時間を決めて定期的に休憩を取りましょう。日陰や空調の効いた場所で体を休め、水分補給を行います。

 

  • クールダウンの徹底: 休憩中は、体を冷やすことを意識しましょう。濡れタオルで体を拭く、冷却スプレーを使用するなど、体温を下げる工夫を取り入れます。

 

  • 作業時間の調整: 可能であれば、日中の最も暑い時間帯(14時前後)を避け、早朝や夕方に作業を行うなど、作業時間の調整を検討しましょう。

 

  • 作業内容の調整: 体力消耗の激しい作業は、比較的涼しい時間帯に行う、あるいは複数人で分担するなど、作業内容を工夫しましょう。

 

 

 

会社として取り組むべき熱中症対策と環境整備

電気工事士の安全を守るためには、個人だけでなく、会社としての取り組みも不可欠です。

 

1. 作業環境の改善と設備投資

 

安全で快適な作業環境を整備することは、会社の義務でもあります。

 

  • 休憩場所の確保と整備: 作業現場に、日陰や空調設備のある休憩所を設置しましょう。スポットクーラーや扇風機、冷水器などを設置することで、休憩中のクールダウン効果を高めます。

 

  • WBGT値(暑さ指数)の測定と活用: 環境省や気象庁が提供するWBGT値(Wet Bulb Globe Temperature:暑さ指数)を現場で測定し、作業中止の判断基準に活用しましょう。WBGT値が高くなったら、作業を中断したり、休憩頻度を増やしたりするなどの対応が求められます。

 

  • ファン付き作業服などの支給: 従業員の安全と健康のため、ファン付き作業服や冷却グッズを積極的に導入・支給しましょう。これは、従業員のモチベーション向上にも繋がります。

 

2. 教育・情報提供と緊急時対応体制の確立

 

従業員の熱中症に対する意識を高め、万が一の事態に備えましょう。

 

  • 熱中症に関する教育: 定期的に熱中症に関する研修を行い、症状、予防策、緊急時の対応方法について従業員全員が正しい知識を持つように徹底しましょう。

 

  • リスクアセスメントの実施: 各現場の特性に応じた熱中症リスクアセスメントを実施し、具体的な対策を立て、従業員に周知しましょう。

 

  • 緊急連絡体制の整備: 熱中症患者が発生した場合に備え、緊急連絡先、搬送先医療機関、応急処置の手順などを明確にし、従業員全員が共有しておくことが重要です。救急車を呼ぶ判断基準も明確にしておきましょう。

 

  • 管理者・リーダーの意識向上: 現場の管理者やリーダーは、従業員の体調変化にいち早く気づき、適切な指示が出せるよう、熱中症に関する知識と判断力を高める必要があります。

 

 

 

まとめ

電気工事士の仕事は、社会のインフラを支える非常に重要な役割を担っています。しかし、その一方で、熱中症のリスクが高い環境での作業も多く、自らの命と健康を守るための熱中症対策は、何よりも優先されるべき課題です。

 

個人の日頃からの体調管理とこまめな水分・塩分補給、そして通気性の良い服装や冷却グッズの活用は、現場でできる基本的な対策です。さらに、会社として作業環境の整備やWBGT値の活用、熱中症に関する教育と緊急時対応体制の確立を進めることで、より安全な現場を実現できます。

 

「自分は大丈夫」という過信は禁物です。電気工事士の皆さんが安全に、そして健康に長く活躍できるよう、今日からできる熱中症対策を実践し、現場の命綱をしっかりと守っていきましょう。

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