現場の「つらい」を乗り越える:若手電気工事士のためのメンタルヘルスと仕事術
2025/12/02
投稿者:elecareer_staff
「仕事がつらい」「辞めたい」—若手電気工事士の皆さんがそう感じてしまう瞬間は、決して珍しくありません。体力的な疲労、人間関係の悩み、技術的な壁など、乗り越えるべき課題はたくさんあります。しかし、その「つらさ」の乗り越え方を知っていれば、仕事はもっと楽しく、やりがいのあるものに変わります。今回は、若手電気工事士が心身の健康を保ちながら、仕事を着実に成長させていくための具体的な方法を解説します。
1. 「つらい」と感じる原因を特定し、小さな目標を立てる
「つらい」という漠然とした感情を、具体的な課題に分解してみましょう。
- 技術的な壁
「この作業がどうしても上手くいかない」という場合は、先輩に質問したり、関連書籍を読んだりして、小さな練習目標を立てましょう。
【OJTと動画教材の活用】
先輩のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に加え、社内での研修動画やYouTubeなどの外部教材を活用し、座学と実技を組み合わせた学習を取り入れましょう。理論と実践を両輪で学ぶことで、技術的な理解は飛躍的に深まります。
※企業によっては社外教材の使用制限がある場合があります
- 人間関係の悩み
「話しかけづらい先輩がいる」という場合は、まずは簡単な挨拶から始め、少しずつコミュニケーションの回数を増やしていく努力をしてみましょう。
- 体力的な疲労
疲れが取れないと感じる場合は、睡眠時間を確保する、休日はしっかり休む、食事に気を遣うなど、生活習慣を見直すことから始められます。
【電気工事士特有の疲労要因】
電気工事士は、高所作業(足場の昇降)や、盤内配線などの狭所での無理な体勢を強いられることが多く、これが腰痛や肩こり、慢性的な疲労につながります。また、夏季の熱中症リスク、冬季の寒冷地での作業など、気候条件がもたらす肉体的・精神的ストレスも軽視できません。これらの原因を理解し、適切な対策を立てることが重要です。
2. 完璧主義を手放し、「報連相」を徹底する
若手は「迷惑をかけたくない」「完璧にこなしたい」という思いから、一人で抱え込みがちです。
- 「困ったらすぐ相談」の癖をつける
分からないことや困ったことがあれば、まずは先輩や上司に相談しましょう。自己判断で作業を進めてミスをするよりも、早めに助けを求める方が、結果として早く解決します。
【自己判断の危険性】
電気工事は感電や火災のリスクを伴うため、自己判断での作業や配線ミスが重大な事故に直結する可能性があります。単なる業務遅延だけでなく、安全管理の観点からも「相談」は不可欠です。
- 「報連相」は仕事の基本
報告、連絡、相談は、円滑に仕事を進めるための最も重要なスキルです。こまめな「報連相」を徹底することで、自分だけでなくチーム全体のミスを防ぐことができます。
【効果的な「報連相」の技術】
報告は進捗だけでなく、「中間報告」を意識し、作業が予定より遅れそうな場合は手遅れになる前に伝えましょう。また、相談をする際は、状況、問題点に加え、「自分が考えた解決策」を整理してから話す「プレ相談」のスキルを身につけると、上司や先輩の負担を減らし、より的確なアドバイスを得やすくなります。
3. 仕事とプライベートの「メリハリ」をつける
仕事のつらさを乗り越えるには、プライベートを充実させ、心身をリフレッシュさせることが不可欠です。
- 休日をしっかり楽しむ
休日は仕事のことを忘れ、趣味や遊びに没頭する時間を作りましょう。旅行やスポーツ、読書など、自分が心から楽しめることをする時間を持つことで、仕事へのモチベーションも回復します。
- 睡眠と食事の質を高める
睡眠不足は、集中力の低下やミスの原因になります。毎日決まった時間に寝る、寝る前にスマホを見ないなど、質の良い睡眠を心がけましょう。また、バランスの取れた食事をすることで、体力維持にも繋がります。
【休息は安全管理の一部】
疲労や睡眠不足は、現場での注意欠陥を招き、高所からの転落や活線作業での感電といった重大事故のリスクを飛躍的に高めます。このため、休息の確保は単なる自己管理ではなく、プロの電気工事士としての安全管理の最も重要な要素の一つであることを認識しましょう。
【体のケアと筋力維持】
腰痛対策のための体幹トレーニングや、作業前後のストレッチなど、仕事で酷使する体を守るための具体的なセルフケア方法を日常に取り入れましょう。体のメンテナンスを行うことも、長くこの仕事を続けるためのプロのスキルです。
4. 自分の「成長」を可視化する
「つらい」という感情は、自分の成長が見えないときに感じやすいものです。
- 成長ノートをつける
毎日、その日に学んだことや、できるようになった作業をノートにメモしてみましょう。数ヶ月後、そのノートを見返すと、自分がどれだけ成長したかを実感でき、自信に繋がります。
- 「褒める文化」のある会社を選ぶ
自分の頑張りを認めてくれる、褒めてくれる先輩や上司がいる環境に身を置くことも重要です。
5. 働く「目的」を再確認する
なぜ電気工事士になったのか、この仕事を通して何を得たいのか、立ち止まって考えてみましょう。
- 社会貢献
自分が手掛けた病院の電気設備が災害時に人命救助を支えること、データセンターの電源が情報社会を維持していることなど、電気工事が担う社会の生命線としての役割を再認識してみましょう。
- 技術習得
難しい作業ができるようになったり、新しい資格を取得したりと、自身の技術が成長する喜びを再確認してみましょう。
まとめ.「つらい」は成長のサイン
仕事で「つらい」と感じることは、決して悪いことではありません。それは、あなたが成長している証拠です。一人で抱え込まず、周囲を頼り、小さな目標をクリアしていくことで、その「つらさ」は次第に「やりがい」へと変わっていきます。心身の健康を第一に、焦らず一歩ずつ、自身のペースで成長していきましょう。「つらさ」が深刻な状態に陥る前に、企業によっては導入されている産業医や、公的なメンタルヘルス相談窓口、またはEAP(従業員支援プログラム)などの専門的なサポートを躊躇なく利用してください。「助けを求めること」は勇気であり、プロの電気工事士として自己管理能力の一部であると再認識することが、長く活躍するための秘訣です。