インフルエンザ・感染症シーズンに学ぶ、換気・空調設備の重要性
2025/12/24
投稿者:elecareer_staff
インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症が猛威を振る冬季は、換気・空調設備の役割が最も重要になるシーズンです。多くの人が集まるオフィス、商業施設、学校、病院などにおいて、病原体を「拡げない」ための最前線に立つのが、まさに換気システムです。
換気は、単に室内の空気と外気を入れ替えるだけでなく、「適切な温湿度を維持しつつ、省エネも確保する」という高度なバランスが求められます。この難しい要件を実現し、建物の利用者の健康と安全を守るために、電気設備技術者の正確な設計・施工・保守技術が不可欠です。今回は、感染症対策の観点から、空調・換気システムの電気設備における重要課題を実務目線で具体的に解説します。
1. 感染リスクを低減する「必要換気量」とCO2センサーの電気設計
感染症対策における換気の基本は、厚生労働省(2022年版)やJIS規格Z 8122に基づく「一人当たり毎時30㎥」の換気量確保、またはCO2濃度1,000ppm以下の維持です。この基準を満たすために、機械換気システムは常に最大の性能を発揮できる状態である必要があります。
CO2センサーとの連動制御と校正の義務
換気の「見える化」指標であるCO2濃度は、換気システムを制御する重要な電気信号です。センサー設置場所は換気が悪いゾーンを優先し、制御盤までの弱電配線は誤差が出ないルートを確保します。
特に、近年は無線式のセンサーも増えていますが、遮蔽物による通信障害や電池切れのリスクを考慮すると、基幹施設では有線による確実な信号伝達とPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)による堅牢な制御回路が推奨されます。
また、CO2濃度に応じたダンパーや換気扇の自動制御はPLCプログラムで管理し、異常時のアラーム設定も必須です。
CO2センサーは、設置環境や経年劣化により測定値がずれるため、定期的な校正が不可欠です。精度が確保されていないセンサー値に基づく換気制御は、感染リスクを高めるだけでなく、余分な電力を消費する原因ともなり、設備管理者の責任問題にもつながります。
ファンモーターの電力とノイズ対策
換気量を増やすためにファンモーターの回転数を上げる際、モーターへの電力供給や、インバーター制御による高調波ノイズが他の精密機器に影響を与えないよう、設計段階でリアクトルやフィルターを選定し、配線経路も分離することが重要です。
特に、近年普及している高性能なECモーター(電子整流モーター)は、従来のACモーターに比べて効率が良い一方で、インバータ回路が内蔵されているため、意図せぬノイズ発生源となることがあります。ノイズ対策としては、ノイズフィルターの設置に加え、接地線(アース)の適正な施工が基本であり、電気工事の徹底が求められます。
また、増設工事などで既存の分電盤から電源を取る場合は、既存負荷へのノイズ干渉だけでなく、高調波による進相コンデンサの過熱・焼損リスクについても、技術者として事前に計算・確認しておくべき重要なポイントです。
2. ウイルス対策の鍵「加湿」を支える電気設備と結露防止
インフルエンザウイルスは、低温・低湿度(相対湿度40%以下)の環境で生存時間と感染力が長くなるとされています。そのため、冬の感染症対策では、換気と同時に適切な加湿(相対湿度40%〜70%の維持)が非常に重要です。
加湿器の電源と給水ポンプの負荷特性
大型加湿器は多くの電力を必要とし、また給水・排水ポンプも電気設備技術者が担当する重要な負荷です。特に蒸気式加湿器はヒーター電源の容量が大きく、三相200V等の大容量電源が必要となるため、適切な幹線サイズとブレーカー容量の選定、そして保護協調の確保が不可欠です。
一方で、気化式や超音波式は消費電力が小さい反面、給水ポンプの連続運転による負荷が支配的となるため、ポンプの絶縁点検とモーター保護リレーの設定に重点を置く必要があります。
冬季は水道管の凍結による断水リスクもあり、加湿器の空焚き防止回路が正常に作動するか、水位センサーの接点不良がないかを確認することも忘れてはなりません。
熱交換器の役割と結露防止ヒーターの点検
窓開け換気では室温が下がり、暖房負荷が増大します。これを防ぐのが熱交換器(全熱交換機)です。排気熱を回収し、給気に熱を戻すことで、省エネを達成しながら強制換気を実現します。この熱交換器のファンや制御盤が、冬場の結露による短絡(ショート)を起こさないよう、盤内ヒーター設備の設計と点検も皆さんの重要な役割です。盤内ヒーターは、制御盤内の温度を一定に保ち、空気中の湿気が電子部品に結露することを防ぎます。本格稼働前にヒーター回路が正常に通電し、温度制御が行われているかを必ず確認してください。
3. 繁忙期前の「フィルター・ダクト」点検と設備管理の徹底
換気システムの性能を最大限に引き出すためには、定期的なメンテナンス、特にフィルターやダクトの清掃・交換が不可欠です。これらを放置すると、換気量が設計値から低下し、感染リスクを高めるだけでなく、モーターに負荷がかかり電力消費量が増大します。
ファンモーターの絶縁抵抗測定と圧力損失の診断
換気設備は常に外気と接するため、湿度や埃、塩害などの影響を受けやすく、ファンモーターのコイルや配線の絶縁が劣化しやすい傾向があります。本格的な冬の稼働前に、絶縁抵抗測定を行い、設備の安全を確保することが、突発的な故障を防ぐ最良の策です。
また、フィルターの目詰まりによる圧力損失は、ファンモーターの回転数(インバータ出力周波数)が上がっても換気量が確保できないという現象を引き起こし、電力の無駄になります。圧力計や風速計を用いた定期的な実測診断と、設計値との比較分析は、電気設備技術者が持つべき重要なスキルです。
データセンターやクリーンルームのように、シビアな風量管理が求められる現場では、これらの数値がBEMS(ビルエネルギー管理システム)を通じて常時モニタリングされており、その「データが示す意味」を読み解き、電気的な調整を行える技術者は非常に重宝されます。
換気連動の強制解除防止と法規的遵守
窓開けによる換気で寒さを感じた利用者が、勝手に換気設備のスイッチを切ってしまう事例があります。特に重要な施設では、安易な電源OFFを防ぐための制御盤側の工夫や、現場責任者への啓蒙も、設備技術者からの提案として必要です。
病院や特定建築物では、非常用換気設備や防火ダンパー、排煙設備が建築基準法や消防法で厳しく規定されており、これらはデマンド制御や快適性維持のために絶対にいじってはいけない負荷です。電気工事を行う際、これらの法規遵守機器の電源系統や制御回路を、意図せず改変・切断しないよう、細心の注意を払い、関連法規の最新情報を常に確認する責任があります。
近年では、感染症対策の一環として「避難所としての機能」を持つ公共建築物も増えており、非常用発電機からの電源供給回路における優先負荷の選定にも、換気・空調設備が含まれるケースが増えています。
まとめ
インフルエンザ・感染症シーズンにおける換気・空調設備は、建物の「生命維持装置」そのものです。適切な換気量を電気的に制御し、同時に適切な温湿度(加湿)を維持することで、私たちは安全かつ快適な室内環境を提供できます。
この分野の技術は、省エネと健康という社会の二大課題を解決するものであり、電気設備技術者としての専門性と社会貢献度を大きく高めます。
カーボンニュートラルの実現に向けた「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の普及に伴い、今後ますます高機能な空調換気制御のニーズは高まっていくでしょう。
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