12月23日は東京タワー完成の日 ― 高層建築を支える電気設備の技術

12月23日は東京タワー完成の日 ― 高層建築を支える電気設備の技術

2025/12/23

投稿者:elecareer_staff

12月23日は「東京タワー完成の日」。1958年(昭和33年)のこの日、東京タワー(正式名称:日本電波塔)が竣工しました。高さ333メートルの鉄塔は、当時「世界一の自立式鉄塔」として日本中を驚かせ、東京のシンボルとなりました。

東京タワーといえば観光名所や夜景を思い浮かべる人も多いですが、その根底には日本の近代化を支えてきた最高峰の電気設備の存在があります。放送電波を届ける役割はもちろん、照明・防災・昇降設備まで、あらゆる電気技術が詰め込まれているのです。

今回は「東京タワー完成の日」にちなみ、高層建築を支える電気設備の工夫を、現場を支える技術者の視点から深く見ていきましょう。

 

 

1. 電波を支える送信設備と電源の安定性

東京タワーは当初、テレビやラジオの電波を広範囲に届けるために建設されました。

 

送信設備

地上300メートル超から送られる電波は、首都圏一帯の放送インフラを支えてきました。現在は東京スカイツリーに主役を譲りましたが、実は現在も「予備送信所」としての極めて重要な任務を解かれてはいません。万が一、スカイツリーからの送出が困難になった場合、即座に東京タワーから電波を出すバックアップ体制が構築されており、放送の継続性を担保する「最後の砦」として現役稼働しています。

 

電源設備

送信機器は24時間365日稼働し続ける必要があり、一瞬の停電が許されません。そのため電力会社からの二回線受電(冗長化された電源系統)に加え、特高受変電設備の信頼性確保、大容量の受電設備、冗長化された配電盤、非常用発電機、無停電電源装置(UPS)が整備されています。特に注目すべきは、電源の切り替え速度です。放送機器は電圧降下に対しても極めて敏感であるため、UPSと高速切替スイッチの組み合わせにより、商用電源の瞬低すら許さない高度な電力品質管理が行われています。非常用発電機は、長時間の停電にも対応できるよう、安定した燃料供給体制が確保されています。

 

耐雷設計

高層建築物は落雷リスクが高く、避雷針の設置・接地工事・サージ防護デバイスなど、雷対策の電気設備が欠かせません。通常のビルと異なり、巨大な鋼材の塊である鉄塔そのものが導体となるため、東京タワーでは鉄塔の脚部を巨大な接地極として利用する「構造体接地」の先駆けとも言える設計がなされています。放送機器を過電圧から守るため、接地抵抗値を極めて低く、かつ安定して保つための大規模なメッシュ接地網が地下に敷設されており、雷サージによる機器故障を未然に防ぐ「防護の要」となっています。

 

 

2. 夜景を彩る照明設備 ― 光の演出と省エネ化

東京タワーといえば、ライトアップされた夜景が象徴的です。

 

通常ライトアップ

オレンジ色の照明は「ランドマークライト」と呼ばれ、温かみのある光で東京の夜を彩ります。冬期は高圧ナトリウムランプのような温かみのあるオレンジ色、夏期はメタルハライドランプを使用した涼しげなシルバーホワイトと、季節によって色温度を使い分ける運用は、電気設備による演出の妙と言えます。

 

特別ライトアップ

季節やイベントに応じて青・ピンク・緑など多彩な光が演出されます。これらは数百台の投光器をDMX512などのDMX制御システムでコントロールする高度な電気設備の成果です。各投光器に割り振られたアドレスを個別に制御することで、複雑なグラデーションや、動きのある光のパターンを瞬時に切り替えることが可能です。これは舞台照明の技術を都市スケールに応用したものであり、大規模な信号線工事と確実な通信品質の確保が前提となっています。

 

LED化の推進

2019年には開業60周年記念事業の一環として、メインダイヤモンドヴェールの照明が全面的にLED化されました。従来のメタルハライドランプからLED照明に切り替えることで、省エネ化と演出の幅が拡大。LEDは消費電力を大幅に削減するだけでなく、色の再現性や制御性も向上させました。リニューアル工事においては、既存の配線ルートを有効活用しつつ、最新のデジタル制御信号をいかに安定して高所まで伝送するかという、改修案件特有の技術的ハードルもありました。これを乗り越えた電気工事士や施工管理技士の緻密な設計・施工があったからこそ、現在の省エネかつ高精細な輝きが実現しているのです。 

 

 

照明器具の保守・点検は、特殊なゴンドラや昇降装置を使う、高度な技術と危険管理が求められる作業です。強風や極低温といった過酷な環境下での電気メンテナンスは、まさに「高所のスペシャリスト」たちの手によって支えられています。

 

 

3. 高層建築の安全と快適性を守る裏側

観光施設としての東京タワーには、来場者の安全・快適性を守るための電気設備も整っています。

 

エレベーター、エスカレーター

展望台へと向かう昇降機は、単なる移動手段ではなく、垂直搬送という重要なインフラです。電源冗長性や緊急停止制御はもちろん、最新の制御システムでは「長周期地震動」によるロープの揺れを検知するセンサーが導入されています。地震発生時には揺れの大きさを予測し、最寄りの階で停止・ドア開放を行う「地震時管制運転装置」が作動します。さらに火災時には避難階へ直行させる制御など、安全に関する高度なシーケンス制御が組み込まれています。

 

防災設備

煙感知器や熱感知器の配置、スプリンクラーポンプの動力確保、非常放送設備の音声到達範囲の計算など、高層建築特有の防災設計が施されています。特に電波塔という性質上、多くのケーブルがシャフトを通っているため、延焼防止のための防火区画貫通部処理(フィセーモ等)も、目立たないながらも電気工事における重要な品質管理ポイントです。

 

空調、換気

高さ300メートルの展望台では、外気温との差を調整するための高性能空調設備が必要です。巨大な空間の温度・湿度を常に快適に保ち、電力消費を最適化するため、中央監視盤によるBEMS(ビルエネルギー管理システム)を用いた高度な監視制御が行われています。外気取り入れの制御やインバータによるファン回転数制御などを組み合わせ、エネルギーロスの最小化を図っています。

 

 

まとめ

12月23日の「東京タワー完成の日」は、日本の電気設備技術の象徴的な日でもあります。

送信設備と電源、ライトアップの照明制御、防災や昇降設備――。東京タワーには電気設備の粋が詰まっており、それが60年以上にわたり東京の街を支えてきました。

 

電気設備業界に携わる私たちにとって、東京タワーは単なる観光名所ではなく「技術の結晶」であり、「未来に伝える学びの場」です。私たちが日々の現場で向き合っている配線一本、結線ひとつが、巡り巡って街のシンボルを支える技術に繋がっています。

 

今日という日をきっかけに、改めて高層建築と電気設備の関わりに目を向けてみると、現場の仕事の意義がより深まるのではないでしょうか。次は、あなたが新しい時代のランドマークを支える主役になるかもしれません。

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