冬の電力需要ピークを前に、電気工事現場で備えるべきこと
2025/11/26
投稿者:elecareer_staff
11月も終盤を迎え、ビルや工場では暖房機器が一斉に稼働し始め、電力需要が急増し始めています。この季節の変わり目こそ、電力契約において最も重要なデマンド(最大需要電力)の管理を緊急で再点検する絶好の機会です。デマンド値が一度でも契約電力を超えてしまうと、翌年一年間の電気料金の基本料金が高止まりする「ペナルティ」が発生します。
電気料金における基本料金は、過去1年間(直近12ヶ月)の最大デマンド値(30分間の平均使用電力の最大値)に基づいて決定されます。例えば、契約電力が500kWの施設が、たった一度のミスで505kWを記録した場合、この5kWの超過分が今後1年間の基本料金に上乗せされ続けます。大規模施設の場合、このペナルティが年間数百万円のロスにつながることも珍しくなく、顧客への信頼を失う重大なリスクとなります。この冬のピークを乗り切ることが、翌年のコストマネジメントの鍵を握ります。
デマンド管理は、単に電気料金を節約するだけでなく、電力設備の保護やBCP(事業継続計画)にも直結します。今回は、冬の電力危機を乗り切るために、電気設備技術者が今すぐチェックすべきデマンド管理の3つの鉄則を解説します。
1. デマンドコントロール設定値の「冬支度」
デマンドコントローラーは、過去の最大値に基づいて設定されていることが多いため、設備が追加・変更された場合や、省エネ機器に更新された場合には設定値を見直す必要があります。
- 現在の契約電力の再確認
今年の冬の電力ピークを安全に乗り切れるか、現在の契約電力が適正かを確認します。特に過去に大幅な負荷変動があった現場では、契約電力自体を見直す余地があります。
契約電力の見直し(増減)には、電力会社への事前申請と、受変電設備の容量計算が不可欠です。冬本番を迎える前に、年間の最大デマンド傾向をグラフで分析し、専門的な観点から適正値を算出してください。
- 制御対象負荷の優先順位設定
デマンドが上昇し制御が必要になった際、どの設備を停止・抑制するかという優先順位のロジックが重要です。暖房や給湯設備は優先度が高いため、照明の一部やエレベーターの一部運転など、業務への影響が少ない負荷を正確にリストアップし、設定に反映させます。
特に、近年導入が増えているインバータ制御の空調機は、デマンド制御の対象とする際に「停止」ではなく「運転周波数の抑制」で対応することで、快適性を維持しつつ効果的にデマンドを抑えることが可能です。制御ロジックの設計には、熱負荷特性の深い理解が求められます。
- 最新のコントローラー機能の活用
AIを活用した予測制御機能を持つ最新のデマンドコントローラーは、従来の警報型よりも正確に制御し、快適性を維持しながら節電を実現します。更新の提案を行う際は、この予測機能のメリットを強調しましょう。
2. 「見える化」による現場の意識改革と連動
デマンド管理は、設備技術者だけの仕事ではありません。電気を使用する現場の意識が最も重要です。
- リアルタイム監視の共有
デマンドコントローラーの監視画面や警報を、現場責任者や関係部署のPC、または大型モニターに表示し、「電力の見える化」を徹底します。
特にビル管理システム(BMS)やエネルギー管理システム(BEMS)との連携を強化することで、電力使用状況をグラフだけでなく、コスト換算や省エネ目標達成率として表示することができ、現場の管理者のモチベーション維持に繋がります。
- 警報レベルの最適化
契約電力の90%に達したら「注意警報」、95%に達したら「行動警報」など、段階的な警報を発することで、現場が自律的に負荷を下げる行動を促します。警報が鳴りすぎて誰も気にしない状態(狼少年状態)になっていないか、設定を再調整します。
この際、警報が発令された際の「標準的な対応手順」(例:休憩室の照明を消す、不要なOA機器の電源を切るなど)を明確に定め、現場への教育を徹底することが重要です。警報発令時の行動マニュアルを策定し、冬のピーク前に全従業員に周知しましょう。
3. BCPとデマンド管理の「両立」
電力抑制は重要ですが、災害や緊急時に必要な電力をカットしてしまっては本末転倒です。デマンド管理は、BCP(事業継続計画)の視点を取り入れて設計する必要があります。
- 重要負荷の除外設定
サーバー、防災設備、医療機器など、絶対に停止させてはいけない「重要負荷」は、デマンド制御の対象から永久的に除外する設定を確実に施します。
- 非常用電源との連携
デマンドオーバー時と、系統電力喪失時の負荷切り替えロジックが矛盾しないかを確認します。いざという時に非常用発電機が起動しない、または重要負荷が切り離されてしまう、といった事態は電気設備技術者の設計ミスです。
- 法規遵守の視点(消防法、建築基準法)
デマンド制御を設定する際、特に注意すべきは「法的に定められた設備を制御対象から除外すること」です。消防法に基づく排煙設備、非常照明、あるいは建築基準法に基づく非常用エレベーターなどは、いかなる理由があってもデマンド制御の対象にしてはなりません。制御ロジックの設計者は、法規要件を正確に理解し、これらの重要設備が誤って抑制されないよう、二重・三重の安全策を講じる義務があります。デマンド制御の改修・点検時に、これらの法的な除外設定が維持されているかを厳重にチェックしてください。
まとめ
この11月下旬のデマンド管理の再点検は、お客様の電気料金を削減し、設備の安全と事業継続性を守る、電気設備技術者にとって最も重要なサービスの一つです。高額な基本料金ペナルティを回避し、お客様の信頼を勝ち取るためには、デマンドコントロールの設定、現場との連携、そしてBCPとの両立という3つの視点を徹底してください。
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