冬の乾燥と静電気対策から学ぶ、電気設備の安全管理【設備保全と防爆の最重要課題】

冬の乾燥と静電気対策から学ぶ、電気設備の安全管理【設備保全と防爆の最重要課題】

2025/11/17

投稿者:elecareer_staff

冬の訪れとともに湿度が低下する11月は、「乾燥」と「静電気」という二つの見えない大敵が電気設備の現場に潜んでいます。静電気は、作業中の不快感だけでなく、電子機器の故障や、最悪の場合、火災・爆発事故の引き金となる非常に危険な存在です。

特に、クリーンルーム、データセンター、引火性のガスや粉塵を扱う工場などでは、静電気対策は単なる安全対策ではなく、設備の機能維持そのものに関わります。今回は、冬の静電気リスクから電気設備を守るために、現場で徹底すべき対策を解説します。

 

 

 

1. 静電気トラブルから電子部品を守る「ESD対策」

わずか数百ボルトの静電気でも、精密な電子部品にとっては致命的な損傷を与えることがあります。これをESDElectrostatic Discharge:静電気放電)トラブルと呼びます。特にサーバーや通信機器が密集するデータセンターでは、僅かな静電気放電がシステムダウンを引き起こす可能性があります。

 

  • 人体帯電の防止

制御盤やサーバーラック内部の作業を行う際は、必ずアースリストバンドを着用し、事前に筐体(きょうたい)や大地に触れて放電する習慣を徹底します。作業着や靴も、帯電しにくい導電性・制電性の素材を使用します。

特にフリースやウール素材など、摩擦で帯電しやすい服装での作業は厳禁です。また、アースリストバンドの接地抵抗が適切に保たれているかの定期的なチェックも欠かせません。

 

  • 作業環境の管理

制御盤の組み立てや修理を行うスペースでは、床材に導電性のマットを敷き、作業台も帯電しにくい材質のものを選定します。

重要な電子部品を扱う際は、静電気拡散性の高い梱包材や容器(ESDバッグ、導電性トレーなど)を使用し、部品を素手で触らないよう細心の注意を払います。作業エリア外への部品の持ち出し時も、必ず専用のESD梱包を義務付けます。

 

  • 湿度管理の徹底

静電気は湿度が低いほど発生しやすくなります。設備室内の相対湿度が40%60%の間に収まるよう、設定値の調整と、湿度計の校正を行います。加湿器や空調システムによる適切な湿度管理を維持します。これは設備の信頼性を高める上でも重要です。

湿度が高すぎると、今度は結露による短絡リスクが高まるため、適切なレンジ(40%60%RH)を維持することが、電気設備管理のプロフェッショナルには求められます。

 

 

2. 粉塵爆発・火災リスクを防ぐ「接地抵抗値の点検」

引火性の高い物質を扱う場所(塗装工場、化学工場、製粉工場など)では、静電気による火花が、周囲の引火性のガスや粉塵に引火し、爆発(粉塵爆発)を引き起こすリスクがあります。これらのエリアは、電気設備技術基準の防爆規定に基づき、厳しく管理されています。

 

  • 接地(アース)の確実な接続

設備機器や配管など、すべての導電性部分が大地に対して確実に接地されているかを確認します。接地抵抗値が適切でないと、発生した静電気を安全に逃がすことができません。特に、液体や粉体を輸送する配管やタンク、フォークリフトなどの移動式設備では、ボンディング(等電位化)が確実に行われているかを定期的に点検します。接地抵抗は、乾燥が進む冬場に変動しやすいため、通常より頻繁な測定を行うことが推奨されます。

 

  • 加湿、イオン化装置の点検

爆発の危険がある場所では、積極的に室内の空気をイオン化して静電気の発生を抑える装置が使われます。これらのイオン化装置や加湿器が、設計通りに機能しているか(特に冬の本格稼働前に)入念に点検します。イオン化装置は、イオンバランスが崩れると逆効果になることがあるため、専用の測定器を用いたバランスチェックが重要です。

 

 

 

3. ケーブル劣化を招く「乾燥」と絶縁対策

乾燥は静電気を発生させるだけでなく、ケーブルや樹脂部品の劣化を加速させる原因にもなります。さらに低温は、バッテリーの性能低下や、遮断器・開閉器内部の動作油の粘性増加にも影響し、復旧・遮断動作の遅延リスクを高めます。

 

  • ケーブル被覆の柔軟性チェック

低温・低湿な環境では、特に古いケーブルの被覆が硬化し、わずかな振動や曲げでひび割れを起こしやすくなります。巡回点検時には、ケーブルの被覆に異常がないか、目視チェックを強化します。ケーブルラックの鋭利な角や、可動部に近い部分は特に注意深くチェックし、硬化が見られる場合は、被覆補修や交換計画を立案する必要があります。

 

  • 盤内の清掃と絶縁チェック

埃や粉塵は、乾燥した状態で帯電しやすく、絶縁体の上に堆積することでトラッキング現象による火災リスクを高めます。冬期に入る前の盤内清掃と、絶縁抵抗測定は、電気設備技術者の必須業務です。

清掃時には、一般的な掃除機ではなく、静電気の発生しにくい産業用掃除機を使用し、清掃後の絶縁抵抗値が基準を満たしているかを確認記録することが、リスクマネジメントの基本です。

 

 

 

まとめ

11月以降の冬の電気設備管理は、静電気と乾燥対策から始まります。これらは、設備の信頼性を守る「ESD対策」であると同時に、人命と財産を守る「火災・爆発対策」でもあります。

目に見えない静電気リスクを正しく理解し、確実な接地、湿度管理、そしてESD対策を徹底することで、皆さんの現場はより安全で信頼性の高いものになります。静電気対策や防爆管理の知識は、電気主任技術者や消防設備士、危険物取扱者などの資格取得にも直結する高度な専門知識です。

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高い安全意識とリスクマネジメント能力は、どの企業でも極めて高く評価されるキャリア資産です。

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