10月21日「あかりの日」を電気・設備視点で考える
2025/10/21
投稿者:elecareer_staff
今日、10月21日は「あかりの日」。1879年(明治12年)のこの日、トーマス・エジソンが実用的な白熱電球を完成させたことにちなみ、照明・あかりに関する関心を高める目的で制定されました。
「明かり」は私たちの暮らしに欠かせない存在ですが、電気設備の世界ではただ“光ればいい”というわけではありません。今日は『あかりの日』を機に、電気設備の視点から、快適性・効率・安全という観点で奥深い照明の世界を考えてみましょう。
1:明るさと快適性 — 光環境を設計する意味
- 照度基準と用途適合性
オフィス、商業施設、倉庫、病院など用途によって求められる照度基準は異なります。例えば、作業空間では安全性と視認性を確保するため一定の照度が必要です。設計段階で適切な照度設計を行わなければ、「暗すぎて目が疲れる」「ムラが出る」などの不満が出ます。
- 演色性・色温度が与える印象
ただ明るいだけでなく、光の色や演色性(色を自然に見せる能力)も重要です。同じ照度でも、暖かい光(電球色)・寒色の光(昼光色)で印象は大きく変わります。特に商業施設などでは、商品の色を正しく見せる高演色性の照明が求められます。
- グレア・まぶしさ対策
不快グレアや光沢グレアを防ぐため、光源の配置、器具の反射設計、レンズや拡散板の工夫などでまぶしさを抑える設計が必要です。特に電気設備設計者は、利用者目線で視線と照明が交わる際に不快にならない光環境を意識すべきです。
2:エネルギー効率と省エネ技術
- LED・高効率光源の進化
近年、LED 照明は寿命・発光効率ともに飛躍的に向上しています。これにより、従来の蛍光灯や白熱灯からの置き換えで大幅な省エネが可能になります。電気設備業界では、照明回路設計・負荷計算においてこれらの特性を反映させることが求められます。
- 調光・センサー制御
センサー(人感センサー、明るさセンサーなど)や調光制御を用いることで、不要な時間の点灯を抑え、効率を高めることができます。これらの制御は、ビル全体のエネルギー管理システム(BEMSなど)の一部として機能し、大きな節電効果をもたらします。
- 設備運用とメンテナンスの最適化
LED などの光源が寿命を迎える際には適切な交換タイミングを管理したり、照明器具の清掃・透明カバーの汚れ除去などで経年による光出力低下を抑制したりする必要があります。運用コストを含めたトータル最適化が重要です。
3:安全性・信頼性・維持管理の視点
- 耐電圧・絶縁設計
照明器具や配線には、雷サージや異常電圧への配慮が欠かせません。特に高層ビルや屋外照明では、サージ対策、アース設計、遮断器選定などが安全性を左右します。
- 耐久性・故障モードの想定
使用温度、振動、湿度など環境条件によって照明設備の故障リスクは変わります。設計段階で寿命予測や保全性(メンテナンスの容易さ)を考慮すべきです。
- 法令・規格・点検義務
建築基準法、電気設備技術基準、消防法などには人命に関わる『非常照明』『誘導灯』『非常用照明』の設置や保守義務が含まれています。定期点検・報告義務を守らないと安全性だけでなく法的リスクも出てきます。
まとめ
あかりは私たちにとって当たり前の存在ですが、電気設備の設計や施工、そして保守の現場では快適性と効率性、安全性をいかにバランスさせるかが常に問われています。LEDや調光制御といった技術の進歩により、照明設計は自由度を増し最適化の可能性も広がっていますが、その性能を長期的に発揮させるためには、安全対策や点検、法令に基づく維持管理が欠かせません。あかりの日をきっかけに光環境やエネルギー効率、安全性に改めて目を向けることで、日常を支える電気設備の奥深さと重要性を実感できるのではないでしょうか。