夜の街を徘徊する「幽霊」の正体は…?街灯のトラブルと電気工事士の仕事
2025/10/24
投稿者:elecareer_staff
来週は子どもたちが楽しみにしているイベント、ハロウィンですね。仮装をした子どもたちが夜の街を歩き、街灯やイルミネーションが彩りを添える季節です。そんな中で、街灯がチカチカと点滅したり、突然消えたりすると「幽霊の仕業?」と背筋がゾクッとする人もいるでしょう。
実際、その正体はオカルトではなく「電気設備の不具合」です。そしてその解決に日々奔走しているのが、電気工事士たち。街灯のトラブル対応は、市民の安全と安心を即座に回復させる、非常に公共性の高いミッションです。街の明かりを守る仕事は、安全な暮らしに欠かせない社会的役割を担っています。今回は、街灯トラブルの仕組みと、それを支える電気工事士の現場について掘り下げます。
1.点滅・消灯の原因は「設備の寿命」と「環境要因」
街灯のトラブルにはいくつか典型的な原因があります。これらの原因を正確に突き止め、適切な措置を講じるのが、トラブルシューティングの醍醐味です。
- ランプの寿命
水銀灯や高圧ナトリウム灯は寿命が近づくと点滅を繰り返す性質があります。内部の電極消耗やガス圧低下により、点灯と消灯を繰り返し、幽霊のようなチラつきが生じます。これはランプが再点灯に必要な電圧を確保できなくなっている状態です。電気工事士は、この不安定な状態を目視で確認し、交換時期を正確に見極める必要があります。
- 安定器の劣化
放電ランプを点灯させる安定器は10年程度で性能低下が起こります。安定器が弱るとランプが不安定になり、明滅や不点灯の原因となります。安定器の交換作業は、高所作業車での対応が必要となるため、確実で迅速な交換技術が求められます。最近のLED街灯では安定器が小型化・内蔵化されていますが、依然として主要な故障原因の一つです。
- 光センサーやタイマーの不具合
自動点灯・消灯を制御する光センサーが誤作動すると、昼間なのに点灯したり、夜でも消えてしまったりします。湿気や汚れが原因になるケースも多いです。センサーの劣化だけでなく、周辺環境の変化(樹木の成長や建物の新築など)により光の入り方が変わり、誤作動を起こすこともあります。この原因究明には、現場の状況を広く観察する洞察力が必要です。
- 配線トラブル・漏電
風雨や経年劣化で配線の絶縁が傷み、短絡・断線・漏電が発生。これも突然の消灯を引き起こします。特に、街灯は電柱やポール内部に配線が組み込まれているため、絶縁抵抗計を使った地道な測定作業が欠かせません。漏電は感電事故や火災の原因となるため、人命に関わる最優先の修繕事項となります。
現場の工事士からは「街灯が一本だけ明滅しているときは、まずランプか安定器を疑う」という声がよく聞かれます。幽霊の正体は、こうした設備の寿命や環境要因なのです。
2.街の安全を支える点検・修繕のプロセス
街灯は単なる照明器具ではなく、「公共インフラ」です。防犯・交通安全に直結しており、一本の消灯が事故リスクを高めるケースもあります。国土交通省の調査では、夜間の交通事故は昼間の約2倍発生しやすいとされ、街灯の明るさは重要な安全要因とされています。
電気工事士は、市区町村や道路管理者の依頼で、以下のような流れで点検・修繕を行います。
- 目視点検:街灯の明るさ・点灯状況を確認
- 測定作業:絶縁抵抗計やクランプメーターで電圧・漏電を測定
- 部品交換:ランプ・安定器・光センサー・配線を必要に応じて交換
- 安全確認:復旧後の点灯試験を実施し、通行人の安全を確保
これらの作業を夜間や早朝に行うことも多く、市民生活への影響を最小限に抑えつつ、迅速に安全を確保することが求められます。修繕完了後に再び明かりが灯った瞬間の達成感は、この仕事の大きなやりがいの一つです。
最近はLED化が急速に進み、寿命が4〜5万時間と長く、消費電力も従来の半分以下。省エネと長寿命の観点から、多くの自治体でLED更新工事が進められています。これによりトラブル件数も減少傾向にありますが、逆に「古い街灯と新しいLEDが混在する街」での維持管理は複雑化しており、電気工事士の技術がますます求められています。
LED街灯は、従来の放電灯とは故障のメカニズムが異なります。LEDモジュールそのものの故障に加え、内蔵されている電源ユニット(ドライバー)の不具合が主要な原因となります。また、LED化に伴い、遠隔での点灯管理や故障検知を可能にする「スマート街路灯システム」の導入も進んでおり、電気工事に加えて通信やITの知識が必須となりつつあります。
3.街灯工事が育てる電気工事士のキャリア
街灯トラブルへの対応は、電気工事士にとって基礎を学べるだけでなく、キャリアアップに直結する現場です。
- トラブルシューティング力:原因を切り分け、適切に修繕する力
- 安全管理能力:高所作業車の使用や道路規制など、一般住宅工事にはない高度な安全配慮と手続き
- 最新技術の知識:LED化、スマート街路灯(遠隔制御や故障検知システム)など次世代インフラへの対応力
これらはすべて、将来的にビル設備管理、再生可能エネルギー、インフラ維持管理といった分野にキャリアを広げるための基盤となります。
また、街灯工事は自治体や官公庁からの発注が多いため、公共事業に携わる安定性やスケールの大きさを実感できるのも魅力です。特に、全国でインフラの老朽化対策が急務となっている今、街灯の点検・更新業務は中長期にわたる安定した需要が見込まれており、キャリアの安定性という点で大きなメリットがあります。
まとめ
ハロウィンの夜、街灯の明かりが子どもたちの安全を照らしている裏側には、電気工事士の技術と努力があります。点滅や消灯といった「幽霊現象」の正体は、老朽化や不具合というシンプルな理由ですが、それを放置せず迅速に対応することで街の安心が守られています。
もし転職を考えている方で「社会に役立つ仕事がしたい」と思っているなら、街灯の維持管理は電気工事士という職業のやりがいを実感できる絶好のフィールドです。高所作業や電気測定、最新のスマート技術への対応を通じて、あなたは市場価値の高いインフラ技術者へと成長することができます。
次に街を歩くとき、足元を照らす街灯の光に、そんなプロの仕事を思い出してみてください。街の光を守る仕事は、あなたの技術で未来の安全と安心を築く、誇り高きキャリアです。