電気工事士の「手取り」は実際いくら？年収アップの現実的な道筋

電気工事士の仕事を目指す上で、やはり気になるのが「手取り」の金額でしょう。頑張って働いた分、実際にどれくらいの収入が得られるのかは、生活設計や将来のキャリアを考える上で非常に重要な要素です。電気工事士の平均年収は公表されていますが、そこから税金や社会保険料が引かれた「手取り」は、多くの場合、イメージよりも少なく感じられるかもしれません。

このコラムでは、電気工事士の「手取り」の実情と、それを高めるための現実的な方法について解説します。

 

 

 

一般的に、電気工事士の平均年収は350万円〜500万円程度と言われています。しかし、「手取り」は、この額面金額から以下の項目が差し引かれた金額になります。

 

• 所得税: 収入に応じて課税されます。月々の給与から源泉徴収され、年末に「年末調整」で清算されます。

 

• 住民税: 前年の所得に応じて課税されます。所得税とは異なり、原則として前年所得に基づき計算されるため、入社1年目と2年目で月々の負担額が大きく変わる点に注意が必要です。

 

• 社会保険料: 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険（40歳以上）などが含まれます。これらの保険料は、企業と従業員が折半して負担する社会保障の要であり、将来の年金や医療費を支える重要な控除です。

 

• その他: 会社によっては、組合費や積立金などが引かれる場合もあります。

 

これらの控除額は、年収や扶養家族の有無などによって異なりますが、一般的には額面金額の75%〜85%程度が「手取り」になると考えておくと良いでしょう。例えば、平均年収が400万円の場合、手取りは年間300万円〜340万円程度、月額にすると25万円〜28万円程度が目安となります。

 

 

 

電気工事士の「手取り」は、個人のスキルや経験だけでなく、いくつかの要因によって大きく変動します。

 

• 経験年数とスキル

未経験の若手の場合、最初は「手取り」が少なく感じられるかもしれません。しかし、実務経験を積むことで、技術手当や資格手当が加算され、徐々に収入はアップしていきます。

特に、難易度の高い高所作業や活線作業に対応できる技術者は、ベース給与が高く設定される傾向があります。

 

• 保有資格

第二種電気工事士だけでなく、第一種電気工事士や施工管理技士、消防設備士などの上位資格や関連資格を取得していると、資格手当が増額され、「手取り」も高くなる傾向にあります。

一般的に、一級電気工事施工管理技士の資格手当は月額1万円～3万円、第一種電気工事士で月額5千円～1万円程度が相場とされています（企業規模により変動）。これらの資格は、基本給に上乗せされるため、着実に手取り額を押し上げます。

 

 

• 勤務先の企業規模と種類

大手企業や、公共工事を多く手掛ける企業は、比較的手当や福利厚生が充実しており、「手取り」も高めになる傾向があります。また、電気工事会社の中でも、特定の専門分野（例：高圧受変電設備、再生可能エネルギーなど）に特化した企業は、高い技術力を評価し、高待遇であることもあります。

特に、近年需要が急増しているEV充電設備や蓄電池関連の施工技術を持つ人材は、相場以上の高待遇で迎えられるケースが増えています。

 

• 残業時間と夜勤、休日出勤

残業手当や夜勤手当、休日出勤手当も「手取り」に大きく影響します。特に、ライフラインに関わる緊急工事などでは、これらの手当が加算されることで、月々の「手取り」が大きく増えることがあります。

ただし、働き方改革が進む現代では、手当頼りではなく、基本給や固定残業代の額を重視して職場を選ぶことも重要です。

 

• 地域差

都市部と地方では、物価や企業の給与水準が異なるため、「手取り」にも地域差が生じることがあります。一般的に、東京や大阪などの大都市圏の方が、地方都市に比べて給与水準は高い傾向にあります。

 

 

 

電気工事士として「手取り」を増やしていくためには、以下のような具体的な行動が考えられます。

 

1. 上位資格の取得

第一種電気工事士はもちろんのこと、現場の管理を担う「施工管理技士」の資格は、大幅な年収アップに繋がる可能性が高いです。資格手当も充実していることが多く、転職市場でも非常に高く評価されます。

特に、大規模工事の責任者となる「一級電気工事施工管理技士」は、企業からの需要が最も高く、年収ベースで50万円〜100万円以上の差がつくことも珍しくありません。

 

2. 実務経験を積み、専門性を高める

多様な現場での実務経験を通じて、技術力を向上させましょう。特に、特定の分野（例：工場設備、ビルメンテナンス、太陽光発電など）の専門知識や技術を習得することで、自身の市場価値を高めることができます。

専門性を確立することで、「代替の効かない人材」となり、企業に対してより強力な給与交渉が可能となります。

 

3. 転職を視野に入れる

現在の会社で年収アップが見込めない場合、より高待遇の企業への「中途採用」を検討することも有効です。自身のスキルと経験をアピールし、給与交渉を行うことで、「手取り」を増やすチャンスを掴めます。転職活動を通じて、自身の市場価値を客観的に把握し、資格や経験に応じた正当な評価をしてくれる職場を選ぶことが重要です。

 

4. 副業・フリーランス

会社員として働きながら、副業で小規模な電気工事を請け負ったり、経験を積んで「フリーランス」として独立したりすることも、収入を増やす一つの道です。独立はリスクを伴いますが、成功すれば、努力や成果が直接収入に反映されるため、青天井の収入を得るチャンスがあります。

 

 

 

電気工事士の「手取り」は、額面給与から各種控除が引かれるため、初めは少なく感じるかもしれませんが、自身の努力とキャリア選択によって着実に増やしていくことが可能です。

上位資格の取得、実務経験の深化、そして自身のスキルを正当に評価してくれる職場を選ぶことが、「手取り」アップへの現実的な道筋となります。電気工事士は社会から高い「需要」がある職業であり、あなたの努力次第で「儲かる」未来を築ける可能性を秘めているのです。